日銀短観 (2019年6月調査)への所感 ー 基本戦略はキャッシュ・ポジションを高くするべきと再確認

マクロ動向・指標考察

こんにちは。飯田隆太です。(twitter:リュータ)

 

 遅ればせながら、日銀短観の2019年6月調査についての所感を書きとどめておきたいと思います。

 

日銀短観とは

 日銀短観とは、日本銀行が年4回(3、6、9、12月)、景気の現状と先行き(景況感)について企業に直接アンケート調査をし、日本の経済を観測するものです。正式には「企業短期経済観測調査」といいます。調査では全国の大手企業と中小企業、製造業と非製造業などで分けて、約1万社以上を対象に、業績や状況、設備投資の状況、雇用などについて実績と今後の見通しを聞きます。

 

 日本企業に投資しようと思うなら、日銀短観は非常にすぐれた先行指標となります。

 

 少し小さいですが、以下は、実際の日銀短観の2019年6月調査の抜粋になります。折れ線が、大・中堅・中小企業のそれぞれの景況感を示しており、グレーに色分けされている箇所が実際に不況であった時期です。企業の景況感が下り坂を迎えるのを追うようにして、実際に不況の時期を迎えていることがわかります。これが、日銀短観がすぐれた先行指標と言われる所以です。

 

日銀短観 – 2019年6月調査

(日本銀行 短観6月調査 より抜粋)

 

 

日銀短観は、日本への投資で最も重要な経済指標のひとつ

 日本市場への投資では、日銀短観は最も重要な経済指標ともいわれています。その理由は、日本政府の発表するGDPなどの公式データは、(よくも悪くも最近は公に取り沙汰されることが当たり前になってしまいましたが)米国などの政府統計に比べて信用度が低いからです。

 

 例えば、米国の投資家であるカール・アイカーン氏は、日本政府の統計の信頼性について、次のように述べたとされています。

 

「日本のGDPはいったん公表されたあとで、驚くほど大きく修正されることがあります。これは日本経済を予測するうえで非常に厄介な問題です。最初にGDPが大きな伸びを見せていると思ったら、次の修正では横ばいになっていて、最終的に修正された値を見るとマイナス成長だったというようなこともあるのです。」

(『ウォールストリート・ジャーナル式 経済指標 読み方のルール』、かんき出版、2012より)

 

 一方で、カール氏は日銀短観は日本経済を非常に正確に反映しているとコメントしています。その正確さについては、既にグラフで確認したとおりです。

 

2019年6月調査の日銀短観の具体的な中身

 さて、2019年6月調査の日銀短観の具体的な中身についてですが、いくつか書きとどめておくべきポイントは次の点になります。

 

 日銀短観の業況判断(企業目線の景況感)は下りカーブを迎え始めた

 基本戦略は、投資は手控えキャッシュ・ポジションは高くする

 2019年度の大企業の想定為替レートは109.3であり要注意

 

日銀短観の業況判断(企業目線の景況感)は下りカーブを迎え始めた

 以下は、先程のグラフの再掲になりますが、明らかに業況判断は下りカーブを迎え始めています。過去に何度もこの指標が景気の先行きを正確に伝えてくれたことを踏まえれば、これから日本経済は不況を迎えるでしょう。

 

日銀短観 – 2019年6月調査

(日本銀行 短観6月調査 より抜粋)

 

2019年度の大企業の想定為替レートは109.3であり要注意

 輸出で稼ぐ製造業は特に要注意です。なぜなら、日銀短観では、2019年度の大企業の想定為替レートは109.3としていますが、連日メディアで取り上げられているように、米国は確実に年内には利下げをするでしょうから、109.3以上の円高になることが予想され、輸出で稼ぐ日本企業各社の業績を直撃するでしょう。

 

基本戦略は、いまは投資を手控えキャッシュ・ポジションを高くする

 以上を踏まえると基本戦略としては、小型株で既に相当割安な銘柄やディフェンシブ銘柄などを除いて、日本市場への投資は避けるべきです。そして、投資を手控えキャッシュ・ポジションを高くすることです。

 

 米国の株式市場も経済指標とは相反して、過熱感を増しているので、規模や頻度はわかりませんが、そう遠くない将来に調整がなされていくはずです。そのときに、「お買い得な値段」で、各種優良銘柄を買い漁れるか、含み損を抱えてただただ狼狽するかは、いまのアクションにかかっていると考えています。

 

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