「炭鉱のカナリア」がなく頃に – 景気減速の代表的なサイン3つ

マクロ動向・指標考察

こんにちは。堤 国之助(twitter:kuninosuke1)です。

 

 一般にあまり聞きなれた言葉ではないかもしれませんが、投資に携わる人の間ではよく知られている「炭鉱のカナリア」という言葉があります。語源は、炭坑内で有毒ガスが発生した場合、人間よりも敏感に反応するカナリアがその危険を察知するので、カナリアがさえずりを止めるタイミングを基準に危険を察知していたことに由来します。

 そこから転じて、マーケットが景気減速に向かうサインを「炭鉱のカナリア」と呼ぶようになりました。今回はその中から、3つの代表的な指標を紹介します。

 

バルチック海運指数(BDI)

 バルチック海運指数(Baltic Dry Index、通称BDI)とは、イギリスのバルチック海運取引所が算出するばら積み船運賃の総合指数のことです。世界の「貿易の活発さ」と関連性の高い指標であり、貿易が活発であることは、バルチック海運指数が上昇する主要な要因となります。逆に言うと、バルチック海運指数が低迷していることは、貿易という経済活動が低迷していることを示します。こうした要因から、バルチック海運指数は世界経済の先行指標としても認識され、世界経済の動きに2カ月先行するとも言われています。

 足元のバルチック海運指数は、2019年7月下旬に5年7ヵ月ぶりの高値をつけましたが、高値から2割低下しています。米中衝突の出口が見えない現状、更なる下落も起こりうるため、注視が必要です。

 

直近5年のバルチック海運指数

https://www.bloomberg.co.jp/quote/BDIY:IND

 

逆イールド

 2019年3月に、アメリカ債券市場で、3カ月債券と10年債券の利回りが2007年以来約12年ぶりに逆転し、「逆イールド」が発生したと、市場関係者の中で話題となりました。

 通常、3ヵ月の債券と10年の債券では、10年の債券の方が金利は高いです。長期金利は銀行が企業や個人に融資する際の利息、短期金利は預金者の預け入れ金利と考えると、イメージしやすいかと思います。通常、(長期金利-短期金利)がプラスの為、銀行はお金を貸し出します。ところが、短期金利が長期金利を上回ると、銀行は預金者に金利を支払うこととなるため、貸し出しを渋ります。結果、お金が世の中に出回らなくなり、景気が悪化するのです。

 そのため、逆イールドは昔からリセッション(景気後退)到来のシグナルとされています。過去50年において、米国ではリセッションが起きる前には逆イールドが見られました。逆イールドが起きてリセッション入りしなかったのはたった1度だけです。

 なお、逆イールド発生からリセッション入りまでは平均して1~2年程度となっています。すると、2020~2021年にリセッション入りする可能性が極めて高いと考えられるでしょう。

 

銅価格

 銅の価格は経済の先行きを示してくれるバロメーターとしてよく参照されています。その位置付けから、「ドクターコッパー」とも呼ばれています。

 銅価格3ヵ月先物は、2019年8月に、2年2か月ぶりの安値をつけました。今後も、景気悪化懸念があれば、価格の停滞は続くものと思われます。

 

銅価格について詳しくは、下記記事をご参照頂ければと思います。

ドクターコッパー。「銅は景気を知っている」 - 再度 株式市場の大幅調整の示唆
こんにちは。飯田隆太です。(twitter:リュータ)  「銅は景気を知っている」というのは、投資家のよく使う言い回しです。  銅そのものはただの鉱物ですが、銅の価格は経済の先行きを示してくれるバロメーターとしてよく参照されていま...

 

以上、炭鉱のカナリアと呼ばれるべき指標から、代表的の3つをご紹介しました。ご愛読いただき、ありがとうございました。

 

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