知っておきたいアノマリ- – アメリカ大統領選挙と株価の関連

投資手法・テクニック

こんにちは。堤 国之助(twitter:kuninosuke1)です。

 

 アノマリー(Anomaly)という言葉をご存知でしょうか。アノマリーとは、現代ポートフォリオ理論や相場に関する理論の枠組みでは説明することができないものの、経験的に観測できるマーケットの規則性のことを意味します。つまり、理論的な根拠は持たないものの、「よく当たるかもしれない」経験則のことです。

 

投資家の中には、アノマリーを元に売買する方が少なくありません。効果的と言われるアノマリーを知っておくことは、投資の際にプラスになるでしょう。そのため、当サイトでも代表的なアノマリーを随時紹介していきたいと思います。

 

アメリカ大統領選と株価の関係

 アメリカ大統領選と株価は関連性が強いと言われています。アメリカの大統領の任期期間は4年であり、大統領が就任してから次の選挙実施年まで4年間あります。このスパンで株価動向を見ると、選挙実施年の前年がパフォーマンスが最も高いことが経験則として知られています。

 以下は、1950年から2018年までの期間にかけて、選挙実施年までの各年度ごとのS&P500の年初と年末の株価騰落率の変化をまとめた表になります。

大統領就任任期~選挙実施までの4年間と株価騰落率(過去68年間のS&Pのデータを基に作成)

 

 御覧の通り、大統領選がおこなわれる前年が最も高いパフォーマンスを示しています。中段の行(トータル損益)は、過去68年間にかけて、各年度(3年前、2年前、前年、選挙実施年)の年初にS&P500指数を購入し、各年の年末に売却したと仮定した場合のトータル損益です。過去68年において、常に選挙前年の年初に購入し、年末に売り払うという取引を繰り返していれば、資産が2.5倍以上となる計算です。

 最上段(勝率)は、過去68年において、この手法を行った場合の平均的な勝率であり、大統領選の前年は88.0%となっています。過去68年のうち選挙前年は17年ありますが、そのうち15年がプラス収支であることを示しています。

最下段の平均損益は、17回の取引の平均損益を意味しています。

 

 このような結果となる理由として考えられることは、翌年(大統領選)の大統領選において、国民の支持を得るための景気対策(株価に好影響)を打ち出されることが予想されるため、株価が上昇するとされています。

 選挙に向けての政策としては、減税、雇用増加政策(公共事業の拡大、助成金の投入 等)が実施されます。言うまでもなく、これらは株価にとってプラス材料です。したがって、選挙パフォーマンスが実施されやすい大統領選前年に株価も上昇していると考えられます。

 

アノマリーも一種の美人投票

 経済学者のケインズは、自著の中で金融市場における投資家の行動パターンを「美人投票」として例えました。理論的には、株価は基本的にはファンダメンタルズが考慮され適正な値段となるはずです。

 しかし実際は、業績のよい投資対象の株価が高く、そうでない株価が安いとは限らないことがわかっています。むしろ、その時々の投資対象に対する風評や先行きの期待感・失望感、あるいは需給関係などによって株価は決定されます。つまり、多くの人々の「人気投票」の価格が価格決定にされる現実を表す言葉として「美人投票」と称したのです。

 

 同様に、既に紹介したアノマリーは理論的な枠組みでは説明がつかない動きではありますが、「アノマリーを信じる投資家が存在する」こと効果を生み出す要因と考えられます。「大統領選の前年だから経済対策がされるはず」、「大統領選の前年は株価が上がると考える投資家がいるだろうから、先んじて買っておこう」こうした考えの投資家が一定数存在する結果、株価上昇という結果に実際に起こっていると言えるでしょう。

 

選挙と関連して見た今年のパフォーマンスは?

 2019年1月2日のNYダウは、初値が23313.5ドルでスタートしています。2018年末の大幅な株価下落を受け、直近では非常に低い水準でした。2019年8月15日時点で、株価は25,579.3ドルと約10%上昇して推移しています。米中貿易摩擦など、不透明な経済要素が多い中ではありますが、今年も大統領選前年のアノマリーは当たりそうな状況です。

 

 以上、知っておきたいアノマリー「アメリカ大統領選と株価の関連」の紹介になります。ご愛読いただき、ありがとうございました

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました