ミステリー小説『悪寒』 – 犯人よりも典型的な日本のサラリーマン像に身震い

キャリア・スキル

こんにちは。飯田隆太です。(twitter:リュータ)

 

 三連休ということで、久しぶりに小説を読みました。

 

 伊岡瞬の「悪寒」です。

 

「憎んでいた上司が殺された。犯人は、自分の妻だった-」

 

 という煽り文がカバーにデカデカと記述されるこの小説は、ミステリー小説としてもかなり面白いのですが、典型的な日本のサラリーマン像を学べる小説としても一読に値します。自分がどのような人物になりたいか、どのようなキャリアを歩みたいか、を考える際に有用だとも思いましたので、ここでも紹介します。

 

(※物語の核心部分のネタバレは避けていますが、前情報なしに、『悪寒』を読みたいと感じている方は以降をスクロールしないほうが良いかと思います)

 

小説 – 『悪寒』の概要

 

 主人公の藤井賢一は、一部上場の製薬会社に勤める40代のサラリーマンですが、ある出来事をきっかけに山形県にある系列 孫会社に出向することになります。

 そこで描かれる彼の生活は、「失意の生活」というものにふさわしいものです。店長代理という肩書ではあるものの、5年目の社員と変わらず未経験のノルマ飛び込み営業に明け暮れるも、なかなか成果を出せずに支店長から散々の嫌味を言われる毎日です。

 

 この不本意な転勤も、「1年で戻れる」と本社の重役との口頭による約束を取り付けていることと、家族のためを思えばと我慢を続けています。しかし、この口頭の約束も、その日が近づくにつれても本社への異動に関連する情報が一向にこないことから生まれる猜疑心が膨らんでいきます。また、妻からは出費が嵩むので毎月戻ってこなくていいと言われたり、ようやく年末年始に戻れたと思えば、夫婦の営みまで拒絶されます。

 

 このような失意の生活を続けている中で、さらに家族が崩壊に進む新たな事件が起きます。そこで主人公の藤井賢一は、勤め人という立場と、家族を守るという立場で自分はどう動けばよかったのかを葛藤することになります。

 

典型的な日本のサラリーマンの行動基準

 

 先程書いたとおり、ある事件の真相を追いかける過程で、主人公の藤井賢一は、勤め人という立場と、家族を守るという立場で自分はどう動けばよかったのかに葛藤していくこととなります。

 しかしながら、彼の行動の軸は一貫して、組織のどの一派について、どのように落とし前をつければ、組織で生き延び続けられるかという点に終始しており、物語が進んでもこの軸は基本的に変わりません。

 

 ある場面で、主人公は次の言葉をつぶやきます。(括弧内は、実際には口に出さずに飲み込む)

 

 「働いたこともない人間にはわからない。労働して対価を得るということはそういうことなんだ。法に触れない限りは – (会社には忠誠を尽くす)」

 このような価値観で動き続けてきた主人公ですが、各派閥の権力者に翻弄され続け、最終的には家族を守るためには自分の行動は間違っていたのではないのか、という思いに至ります。

 

会社に忠誠を尽くした挙げ句に報われないという状況から脱するには

 

 会社に忠誠を尽くした挙げ句に、報われないという話は、昨今のサラリーマンの状況を連想させます。

 

 現在、45歳以降のサラリーマンに対して大企業を中心として、リストラをすることが増えています。

 

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 その会社でしか生きられない、という状況は、交渉相手(企業)からの申し出のすべて受け入れざるを得ないことを意味します。転勤しろ、と言われれば転勤せざるを得ませんし、給与を上げられない、と言われればそれまでですし、クビを切ると言われても懇願することしかできません。『悪寒』の小説の主人公のように、企業のいいなりに翻弄されることになります。

 

 上に紹介した記事でも書いていますが、このような状況から脱するには、自分のスキルや転職可能性がある先を整理しておくことや、投資や副業などの副収入があるようにしておくこと、また、ある程度資産を蓄えておくことでリストラされたとしても計画の後ろ倒しくらいに済むようにしておくことでしょう。

 

 このサイトでも、スキルや資産運用の考え方について色々紹介させて頂いているので、参考にしてもらえればと思います。

 

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