上昇相場に潜む「二番底」

マクロ動向・指標考察

こんにちは。堤 国之助(twitter:kuninosuke1)です。

 

 世界の市場は方向性が定まることなく、激しい乱高下繰り返しています。識者の中には底打ちしてここから株価回復に転じると予想する方がいる一方、二番底を予想される方も一定数存在します。今回は2つのデータを用いて、今後の相場を検証していきます。

二番底とは

 二番底は、経済やマーケット全般で使われる用語で、景気や相場が悪化している時に、一度底を打って好転した後、再度悪化して底を打つことをいいます。一般にマーケットにおいては、下げ相場(下落トレンド)では、一気に大底を付けることは少なく、若干の戻しを繰り返しながら数度にわたって安値を更新していき、その際に最初の安値を「一番底」、次の安値を「二番底」、その次の安値を「三番底」と言い、そして最も安いところを「大底」と言います。

 3/27時点で世界の株価は反発の様相を見せています。アメリカが2兆円の経済政策を打ち出した他、各国も大規模な財政政策を表明し、安心感と割安感から買いが入っているようです。ですが、肝心な新型コロナウイルスの収束目途はまだ立たず、実体経済への影響も見えていません。そのため、二番底を形成する可能性は十分に考えられます。

バルチック海運指数

 一つ目の参考データは、バルチック海運指数(Baltic Dry Index、通称BDI)です。当指標は、イギリスのバルチック海運取引所が算出する、ばら積み船運賃の総合指数のことです。世界の「貿易の活発さ」と関連性の高い指標であり、貿易が活発であることは、バルチック海運指数が上昇する主要な要因となります。逆に言うと、バルチック海運指数が低迷していることは、貿易という経済活動が低迷していることを示します。こうした要因から、バルチック海運指数は世界経済の先行指標としても認識され、世界経済の動きに数か月先行するとも言われています。

 足元のバルチック海運指数は、2019年9月を天井に下落を続け、2月上旬に底 値を付けています。その後、上昇に転じましたが、ここ3月中旬から下落に転じています。この動きをニューヨーク・ダウと比較してみると、バルチック海運指数が高値を付けた4ヶ月後の2020年1月に高値を付け、そこからバルチック海運指数同様に下落。バルチック海運指数が底値を付けた1ヵ月後に底値を付け、徐々に上昇しています。ただし、バルチック海運指数が3月中旬から下落に転じているところを見ると、遅行するニューヨーク・ダウも、まだまだ下落余地を残しているように思えます。

 

1929年の世界恐慌

 二つ目の参考データは、1929年の世界恐慌時のニューヨーク・ダウのチャートです。

 御覧の通り、今回の暴落と非常に似た形のチャートを描いています。もちろん、当時と現代では前提条件が全く異なるため、今後も世界恐慌と同様チャートを形成するという訳ではありません。一方で当時は庶民がこぞって投資を開始し、町の靴磨きの少年すら株を買おうとするなど、投資のすそ野が非常に広がってきたところでした。これに対して現代ではAIによる取引規模拡大や、レバレッジ取引の流行など、似通った点も存在します。そして当時も、経済政策や株の割安感から買いが増えた後、失業率などの実体経済への影響が明確化したため、二番底を形成しました。今回も実体経済への影響が見極められていないということを考えると、ここからの下落も十分に想定できます。

 

個人投資家の取るべき行動

  上記2点を踏まえ、今後二番底を形成する可能性は十分に考えられます。個人投資家は相場に振り回され疲弊されている方もいらっしゃるでしょうが、一番大切なことは市場に残ることです。そして生き残るためには、 自分のリスクに合わせて リスク資産と現金の比率を保持することが重要です。自分を含めて市場を注視しつつ、投資を続けられればと思います。

 

 以上、上昇相場に潜む「二番底」になります。ご愛読いただき、ありがとうございました

 

 

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