Reorganization – 組織再編

事業譲渡(事業の譲渡)

事業譲渡とは、一定の営業目的のために組織化された機能的財産を、一体として移転することをいい、譲受人が営業者たる地位を承継し、譲渡人が、法律上、競業避止義務を負うことをいう(判例の見解)。会社の行為を「事業譲渡」といい、個人事業者(商人)の行為を「営業譲渡」という。

事業譲渡の本質は「事業(ビジネス)を客体(目的物)とした売買契約」なので、厳密には会社法上の組織再編にはあたらない。しかし、実務上は合併や会社分割などと同様、組織再編の手法として活用されている。

事業譲渡に関する主な規定は以下のとおりである。

① 譲渡会社は、当事者間に別段の意思表示がない限り同一市町村および隣接市町村において、20年間の競業禁止義務を負う(同一の事業を行うことはできない。

会社法第21条1項)。競業禁止期間は当事者間の意思表示によって伸長・短縮が可能だが、30年を超える特約は結べない(会社法第21条2項)。

② 譲渡会社および譲受会社は、原則として、以下の場合には株主総会特別決議によって、事業譲渡契約の承認を受けなければならない(会社法第467条1項1~3号、309条2項11号)。

1)事業の全部譲渡

2)事業の重要な一部の譲渡
なお、重要な一部の譲渡とは、譲渡資産が譲渡会社の総資産額の5分の1(定款で下回る割合を定めた場合はその割合)を超える価額のものをいう。

3)事業の全部譲受け

③事業譲渡に反対する株主は、原則として株式買取請求権を有する(会社法第
469条1項)

④ 事業譲渡契約に関する書面の備置き。閲覧等の義務はない。

⑤ 事業譲渡には、債権者保護手続は規定されていない。譲渡会社と譲受会社間で譲渡会社の債務を移転する契約がなされても、債権者の個別の同意を得なければ債権者に対抗できないため、譲渡会社が依然として債務を負う。

⑥ 平成26年6月27日に公布された改正会社法により、新たな類型として、親会
社による子会社株式等の譲渡という規定が創設される。
具体的には、譲渡会社が、その子会社の株式(または持分)の全部または一部の譲渡をする場合において、 1)当該譲渡の対象となる株式(または持分)の帳簿価額が、当該譲渡会社の総資産額の5分の1(定款で引下げ可)を超える場合で、かつ、2)当該譲渡会社が、効力発生日において当該子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有しなくなるとき(=子会社の支配権を失う場合)には、譲渡会社では株主総会の特別決議が必要となる(会社法第467条1項2の2号)。

合併

合併は2以上の会社が契約により1つの会社に合同する組織上の行為であり、包括承継(一般承継)である。合併には吸収合併と新設合併がある。

吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であって、今併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう(会社法第2条27号)。

新設合併とは、 2以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいう(会社法第2条28号)。実務上、吸収合併のほうが手続が煩わしくないため、吸収合併のほうが多く利用されている。

 

合併に関する主な規定は以下のとおりである。

① 合併の当事会社は、合併契約について原則として株主総会特別決議による承認を受けなければならない(会社法第309条2項12号、782条1項1号、783条1項、794条1項、795条1項、803条1項1号、804条)。また、合併契約の内容等を記載した書面(または電磁的記録)を、本店に一定期間備え置かなければならない。

② 合併に反対する株主は、原則として株式買取請求権を有する(会社法第785条、797条、806条)。

③ 合併は債権者の利害に重大な影響を及ぼすおそれがあるため、債権者保護手続が必要となる(会社法第789条1項1号、799条1項1号、810条1項1号)。

④ すべての会社(株式会社および持分会社)は相互に合併できる(会社法第748条)。

株式交換

株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社または合同会社に取得させることをいう(会社法第2条31号)。

株式移転とは、 1または2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいう(会社法第2条32号)。

1 株式交換

ある株式会社(完全子会社となる会社=株式交換完全子会社)の株主が保有するすべての株式を、他の株式会社(完全親会社となる会社=株式交換完全親会社)の株式と交換する方法である。これにより完全(100%)親子会社関係が実現する。

親会社となる株式会社から見た場合、株式会社の買収を現金の代わりに自己株式を
利用して行うことができる。

2 株式移転

ある株式会社(完全子会社となる会社=株式移転完全子会社)の株主が保有するすべての株式を、新たに設立する会社(完全親会社となる株式会社=株式移転設立完全親会社)の株式と交換する方法である。完全子会社が複数の場合、これらの株式会社は兄弟会社となる。

株式交換・株式移転に関する主な規定は以下のとおりである。

① 株式交換・株式移転は、株式交換契約・株式移転計画について原則として株主総会特別決議による承認を受けなければならない(会社法第309条2項12号、782条1項3号、783条1項、794条1項、795条1項、803条1項3号、804条)。

2社以上が共同で株式移転を行う場合、共同で株式移転計画を作成しなければならない。また、株式交換契約・株式移転計画の内容等を記載した書面(または電磁的記録)を、本店に一定期間備え置かなければならない。

② 株式交換・株式移転に反対する株主は、原則として株式買取請求権を有する(会社法第785条、797条、806条)。

③ 株式交換・株式移転は会社財産の変更を伴うものではないので、原則として債権者保護手続は不要である。

④ 株式交換において合同会社は完全親会社となれるが、合名会社、合資会社は不可能である(会社法第767条括弧書)。

⑤ 株式移転は株式会社のみ可能である(持分会社が当事会社となる株式移転はない)。

会社分割

会社分割とは、会社が事業の全部または一部を他の会社(新設会社・既存会社)に承継させ、その事業を自社から分割し外部に出すことである。事業譲渡の手続と比べ、債権者の個別の同意を得ずに債権(債務)を移転できるなど、煩雑な手続が不要であり、迅速な企業再編が可能である。会社分割には、吸収分割と新設分割がある。

1 吸収分割(会社法第2条29号)

吸収分割とは、株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後他の会社に承継させることをいう。

2 新設分割(会社法第2条30号)

新設分割とは、 1または2以上の株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割により設立する会社に承継させることをいつ。

 

会社分割に関する主な規定は以下のとおりである。

① 会社分割は、吸収分割契約。新設分割計画について、原則として株主総会特別決議による承認を受けなければならない(会社法第309条2項12号、782条1項2号、783条1項、794条1項、795条1項、803条1項2号、804条)。2社以上が共同で新設分割を行う場合、共同で新設分割計画を作成しなければならない。

また、吸収分割契約・新設分割計画の内容等を記載した書面(または電磁的記録)を、本店に一定期間備え置かなければならない。

② 会社分割に反対する株主は、原則として株式買取請求権を有する(会社法第785条、797条、806条)。

③ 会社分割は債権者の利害に重大な影響を及ぼすおそれがあるため、原則として債権者保護手続が必要となる(会社法第789条1項2号、799条1項2号、810条1項2号)。

④ 吸収分割をできる(三分割会社となれる)のは株式会社および合同会社である(会社法第757条)。一方、吸収分割承継会社は、すべての会社(株式会社および持分会社)がなれる(会社法第760条)。

③ 新設分割をできる(=分割会社となれる)のは株式会社および合同会社である(会社法第762条)。一方、新設分割設立会社は、すべての会社(株式会社および持分会社)がなれる(会社法第765条)。

3 労働契約承継法(会社分割に伴うる法律)

会社分割においては、分割を行う会社は吸収分割契約や新設分割計画を作成し、承継会社や設立会社に承継させる権利義務の範囲を決めることができるが、労働契約の承継については、労働者に与える影響が大きいため、労働者保護の観点から労働契約承継法が施行されている。

分割対象の事業に「主として従事する者」かどうか、吸収分割契約や新設分割計画に関する書面等に労働契約が承継される旨の定めがなされたかどうか、この2つの基準によって労働契約の承継または残留を定めるものである。なお、労働者にはパート・アルバイトなども含まれる

4 会社分割に係る改正論点

平成26年6月27日に公布された改正会社法により、会社分割について以下の制度が創設される。

[1]詐害的な会社分割等における債権者の保護(会社法第759条4~ 7項、764条4~ 7頂)

会社分割において、承継会社・新設会社に承継されない債権(債務)の債権者(=「残存債権者」という)を害することを知つて、分割会社が会社分割をした場合、残存債権者は、承継会社・新設会社に対して、承継した財産の価額を限度として、債務の履行を請求できるようになる。

以下のいずれもの要件を満たすことが必要となる。

1)分割会社に対する残存債権者の債権が存在すること

2)分割会社が、残存債権者を害することを知って行った会社分割であること

3)承継会社が、効力発生日において、残存債権者を害することを知っていたこと(注:新設会社は設立中のため、 3)の要件はない)

なお、残存債権者は、分割会社が、残存債権者を害することを知って会社分割を行ったことを知った時から2年以内に請求(または請求の予告)をしないと、履行の請求権は消滅する。

また、詐害的な事業譲渡においても、残存債権者を保護するための同様の規定が創設される(会社法第23条の2)。消滅時効期間も「2年」で同様である。

[2]個別の催告の対象とならない債権者の保護(会社法第759条2頂、764条2頂)債権者保護手続は、官報公告+知れている債権者への個別の催告(通知)が原則であるが、官報公告に加えて日刊新聞紙による公告または電子公告を行った場合、個別の催告を省略できる。

そして、官報公告のみが行われた場合、会社分割に異議を述べることができる分割会社の債権者(=債権者保護手続の対象となる債権者のこと)で、個別の催告を受けなかった者(=知れていない債権者など)は、分割契約・分割計画における債務の負担の取決めにかかわらず、分割当事会社(分割会社、承継会社または新設会社)に対して、一定額を限度として、当該債務の履行を請求することができるよう
になる。

簡易組織再編

簡易組織再編とは、存続会社などが当該組織再編の対価として交付する株式などの財産価額が当該存続会社などの純資産額の5分の1以下(定款で下回る割合を定めた場合はその割合)などの要件を満たした場合、株主総会決議による承認を不要とする制度である。

略式組織再編

略式組織再編とは、支配関係にある会社間での組織再編について、被支配会社での承認株主総会を不要とする制度である。支配関係のある会社間とは、ある株式会社(被支配会社)の総株主の議決権の10分の9以上(定款で加重可)を他の会社などが有している会社間をいう(会社法第468条1項)。支配している会社を特別支配会社といい、被支配会社での株主総会決議による承認は不要となる。

なお、平成26年6月27日に公布された改正会社法により、略式組織再編の特別支配会社については、反対株主の株式買取請求権は認められなくなる(会社法第785条2・3項、797条2・3項、469条1~ 2項)。⇒略式組織再編で反対株主の買取請求権が認められるのは、被支配会社における特別支配会社以外の株主と、特別支配会社の株主になる。

 

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