FF金利 – 知っておきたい経済、株価、為替、債権価格に与える影響をおさらい

マクロ動向・指標考察

こんにちは。飯田隆太です。(twitter:リュータ)

 

 当サイトを読まれている方は、bizSpa!フレッシュ様の連載を経由して来ていただいている方も多いようで、まだ投資を始められて間もない方も多いと理解しております。

 

 そこで、経済の動きを左右する代表的な指標のひとつであるFF金利を紹介しておきたいと思います。

 現在、米国をはじめとした各国は、経済成長と株価を維持するために政策金利をこぞって下げています。政策金利の決定内容は、マーケットの動向を大きく左右します。

 世界分散型ETFを定期積立投資しているなどの場合は文字通り「ほったらかし」投資でも問題ないでしょうが、それ以外の場合は、このような重要な指標の概要の理解と、理解した上で、いつマーケットインするのか判断する際の材料としてお使いいただければと思います。

 

FF金利とは

 FF金利とは、Federal Funds 金利のことで、米国の銀行同士が短期でお金の貸し借りをするときに適用される金利のことです。(ちなみに英語では”Federal Funds Rate”と言います)

 

 米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が決め連邦公開市場委員会(FOMC)を定期的に開催し、そこでこの金利の目標値を決定しています。(ちなみにFF金利は、米国の中央銀行が決定する政策金利を意味しますが、中央銀行や政策金利自体は、どの国でも共通する仕組みですので、読み替えが可能です。)

 

 

 金利を上げ下げすることにより、連邦準備制度理事会(FRB)は経済のスピードをコントロールしています。以下では、その仕組を細かく見ていきます。

 

FF金利の高低は景気を左右する

 

FF金利が重要なのは、他のさまざまな金利に直接影響するからです。変動金利型住宅ローン(ARM)やクレジット・カードの利率、銀行預金の利息などにも影響してきます。

 

 FF金利が上がると、ローンやクレジット・カードの債務にかかるコストが増えます。すると人々が商品やサービスを買うのに使えるお金が減ってしまいます。またこのような民間の購買力以外にも企業の設備投資意欲にも大きく影響を与えます。金利が上がれば、お金を借りて、設備投資する意向は減りますから、景気は自ずと減速する方向に働きます。

 FOMCの金利のコントロールは小さな範囲(直近2019年7月末の利下げは0.25%)で行われますが、それでも一部の人にとっては深刻な影響を与え、またその範囲も広範囲に及びます。

 

 逆に金利が下がるということは、上述した例とは逆に景気が拡大していくことが予想されます。ローンやクレジット・カードの債務にかかるコストが減るからです。すると人々の商品やサービスを買うのに使えるお金が増えるというわけです。

 また、企業も銀行に支払う負担が少なくなるため、その分企業は利益を確保できますし、設備投資を行う方向に動きます。そのため失業率や製造業の業績が悪化しているようなときには、景気を支えるためにFOMCはFF金利を改定することがあります。

FF金利の関連情報が公開後には市場は大きく動く

 

 FF金利の関連情報が公開後には市場は大きく動きます。以下は、7月後半からのNYダウチャート(1ヶ月)ですが、7月31日にFOMCが0.25%の利下げを発表してから、急激に下降していることがわかります。これは、マーケットとしては0.5%以上の利下げを盛り込んで買われていたが、0.25%の利下げしかしなかったために、失望から売られたと解釈されています。

 

 ちなみに本日は、この7月31日のFOMC会合で話された内容の議事録が発表されます。この議事録にて、7月31日時点の政策金利に対するFRBの意向がわかるため、もし政策金利をさらに下げる意向が汲み取れれば、株式市場は再び盛り上がるでしょう。また8月23日には、FRBのパウエル議長が基調講演を行う予定ですが、ここで半年~1年内程度の期間における最新の政策金利方針が聞ける予定です。FF金利に関しては、今夜のFOMCの議事録と8月23日のパウエル議長基調講演に注目が集まるところです。

 

NYダウチャート(1ヶ月)

(出所: 2019年8月21日時点、SBI)

 

為替動向にも影響する

  お金は、常に有利な投資先・運用先を探して移動します。A国の円の金利が低く、B国のドルの金利が高いという場合をあげてみると、人々はより有利な金利を求めてA国の資産の比率を減らして、B国の資産の比率を増やそうとします。これにより、金利の高いB国の通貨を買うという動きが出てくることによって、為替はA国通貨は安く、B国通貨は高くなります。

 

 実際に7月31日にFF金利を0.25%下げるという発表をしてから、為替は109円あたりから105~106円付近まで大きく下げています。全体的に円高傾向の動き(いまは投資市場におけるリスクオフ・ムードであり、安全資産として円が買われる)はあるものの、FF金利と為替動向の因果関係を見て取れると思います。

 

ドル円チャート(6ヶ月)

(出所: 2019年8 月21日時点、SBI)

 

 周知のとおり、その国の通貨が安くなることは、輸出する企業にとっては有利になり、その国の通貨が高くなることは、輸出に不利になります。

 ちなみに、トランプ大統領は、ドルを安くしたいという意向を明示的に表に出すことは少ないようですが、金融緩和政策としての本来のFF金利の引き下げという位置付けとは別に、米国企業の輸出に有利になるようにという意向からも、FRBに要請していると思われます。

 

 金利が下がると、円高ドル安に進み、さらに輸出企業が多いとされる日本の株価は下がる傾向に働きますので、この関係も覚えておいてよいでしょう。

 

トランプ大統領のEUのユーロ切り下げに対する発言

(出所: Twitter)

 

債権価格にも影響

 最後に、債権価格に与える影響についてです。債券価格は、金利動向などにより日々変動しています。債券価格は、金利が上昇すれば下落し、金利が低下すれば上昇します。

 

 これはなぜかというと、以下の図がわかりやすいのですが、市場金利が安く(2%)なり、債権の金利が一定のまま(3%)であれば、債権の金利は魅力的になるため、債権を購入したいと考える人が増えます。買いたい人が増えれば、債権価格は上昇します。

 

 逆に、市場金利が高く(4%)なり、債権の金利が一定のまま(3%)であれば、債権の金利は魅力的ではなくなるため、債権を売りたいと考える人が増えます。売りたい人が増えれば、債権価格は下落します。

 

 

債券価格と金利の関係

(出所: 大和証券、債券:債券価格と金利の関係は?)

 

 

 実際に、7月31日に利下げが行われたタイミングから、債権系の価格は上昇しており、この関係性がみてとれます。当サイトでは、景気動向が悪くなってきた際は、AGG等の債権系のETFを買うべきだと書いてきました。これは理由として、株式市場の価格が暴落してくことに対するリスク回避に加えて、景気動向が悪くなってくると、金利の引き下げが金融政策として取られるため、債権の価格が上昇することも理由にあります。

 

AGG(債権ETF)のチャート(1ヶ月)

(出所: 2019年8 月21日時点、SBI)

 

 以上、FF金利の概要や、その他の経済にもたらす全般的な意味を紹介してまいりました。

 

 上述していますが、本日は、この7月31日のFOMC会合で話された内容の議事録が発表されます。この議事録にて、年内の政策金利に対するFRBの意向がわかるため、もし政策金利をさらに下げる意向が汲み取れれば、株式市場は再び盛り上がるでしょう。また8月23日には、FRBのパウエル議長が基調講演を行う予定ですが、ここで半年~1年内程度の期間における最新の政策金利方針が聞ける予定です。FF金利に関しては、今夜のFOMCの議事録と8月23日のパウエル議長基調講演に注目が集まるところです。

 

 市場が下がったときに買うという逆張り派の方も、そうでない順張り派の方も本日はこのFOMCの議事録発表を読んで今後の方針やアクションを決めていくのがよろしいと思います。

 

 以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。以下は関連記事になります。

 

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