アメリカ最長景気の死角 – 景気拡大11年目の株価動向 –

マクロ動向・指標考察

こんにちは。堤 国之助(twitter:kuninosuke1)です。

 

 10月から上昇し始めた株価は止まるところを知らず、NYダウは過去最高値を更新、日経平均は2,4000円の大台に乗り、バブル後最高値が視野に入ってきました。

このまま世界経済は拡大を続けるのでしょうか。今回は、2019年12月現在、市場に潜むリスクについて改めて検証していきたいと思います。

 

海外発の2つのリスクオン

直近の株高をもたらした要因は①アメリカによる対中制裁関税の緩和、②イギリス総選挙における保守党の圧勝の2つです。

市場は不透明性、不明確さを嫌います。①の関税について、これまで関税政策の拡大による貿易高の縮小、それに伴う景気低迷を恐れていましたが、12月13日に米中関税戦争が始まって以来初めて対中制裁を一部緩和しました。これによりNYダウは220ドル高、世界全体の株価動向を示すMSCI指数も過去最高値を更新しました。②のイギリス総選挙の結果はEU離脱問題の不透明感を後退させました。保守党が圧勝することでEU離脱はほぼ確実なものとなり、停滞していたEUとの交渉再開に期待が持てます。

このように足元のニュースは株価を押し上げる大きな要因となったのです。8月に米国債の長短金利が逆転する「逆イールド」が発生し、景気悲観論が市場に蔓延していたことなど、ほとんどの人は忘却の彼方に消え去っています。

 

富裕層の現金資産比率の増加

ところが、こうした好況の中でも景気に敏感な富裕層や経営者は先行きに悲観的です。UBSの調査によると、世界の富裕層の55%は2020年の景気後退入りを予想し、42%が資産の現金比率を高め、株価下落に備えています。同様に、米企業約220社のCFOにインタビューしたところ、7割弱は20年末までの景気後退入りを予測していました。

このような景気後退予測の背景には、実質経済の悪化があります。トランプ大統領のTwitterでは、失業率の低水準や、実質GDPに占める個人消費の好調さをアピールしていますが、その裏で貿易統計、実質GDP、製造業受注、設備稼働率は低水準となっています。実体経済の悪化要因の一つは、米中関税戦争でした。今回の関税緩和で、企業業績がどの程度回復していくかが今後の焦点となるでしょう。

 

後退直前「最後のひと上げ」 ITバブル・リーマンショックが残す教訓

 株式市場では、景気後退の直前に「再度のひと上げ」があると言われます。マクロでは景気減速が警戒される中で、中央銀行が金融緩和策をとる。そのカネ余りが強気相場を形成するからです。ただ、実体経済が伴わなくなり、株価はどこかで大きく調整を迫られます。

 「最後のひと上げ」は過去、何度も見られます。1つは2000年のIT株ブームです。1998年のロシア危機等を受け、FRB議長が3回連続で利下げを実施。それが後のITバブルを招きました。当時、米長短金利の逆転が発生した点も、今の状況と似ています。07年も同様です。05年に米住宅市場が失速したけれど、カネ余りは続き、株価は一段上昇しました。その後に来たのが金融危機でした。

 現在、米中貿易摩擦が世界経済に影を落とす中で、FRBが予防的に3回連続の利下げに踏み切り、株価は高値更新を続けています。過去2回の「最後のひと上げ」に非常によく似ています。

 

バフェット氏の動向

米著名投資家のウォーレン・バフェット氏はITブームに乗らなかったことで深手を負わず、評価されました。リーマン危機では積み上げた現金を米金融機関に出資し、多額の収益を得ました。現在、彼が率いるパークシャー・ハザウェイの抱える現金は、過去最大の約14兆円となっています。大型投資にほとんど動かず、長期の展望があるビジネスを買うには価格が高すぎると冷静に分析しているからです。これもまた、過去2回の「最後のひと上げ」を彷彿させます。

 

個人投資家が取るべき行動

このように、現状のカネ余りから発生している株価上昇は、実体経済を伴わないため長期手には下落を迎えるというのが、著者の見解です。

当サイトでは度々お伝えしておりますが、我々個人投資家がとるべき施策としては、既に金融商品を保有されている方はすぐに売却せず、市況を見守ることをお勧めします。買い場を見極めている方は、直近の株価上昇に踊らされず、しっかりと投資機会を見定めてください。「他人が貪欲であるときに恐れ、他人が恐れているときに貪欲に。」これはバフェット氏の言葉です。長期投資で資産形成を目指す私たち個人投資家は、現状の相場上昇に冷徹な目を併せ持つ姿勢が大事になるでしょう。

 

 

以下、関連記事です。

 

景気後退に備える方策は、以下の記事をご参照ください

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具体的な相場下落時の投資方法は下記記事です。こちらもご参考にしてください。

下げ相場時の「買い下がり投資法」のススメ
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以上、アメリカ最長景気の死角 – 景気拡大11年目の株価動向 – をご紹介しました。ご愛読いただき、ありがとうございました。

 

堤 国之助

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