Calculation in regards to stock – 株式に係る計算

計算とは、株式会社の利益や財産の算定、財務内容の開示などに関する規定のことである。

1 資本金および準備金

[1]資本金の額および資本準備金の額(会社法第445条)

株式会社の資本金の額は、原則として設立または株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込みまた給付をした財産の額となる(金銭の場合を「払込み」、金銭以外の財産の場合を「給付」という)。ただし、株式会社は、払込みまたは給付に係る額の2分の1を超えない額を資本金として計上しないことができ、この場合は資本準備金として計上しなければならない。

会社法では最低資本金に関する制限はない。なお、資本金の額は登記事項である
(会社法第911条3項5号)。

[2]減資(資本金の額の減少)(会社法第447条)

株式会社は資本金の額を減少することができ、0円まで減資することも可能であ
る。ただし、株主および会社債権者の保護の観点から、以下のような規定がある。

株主総会決議

減資は、原則として株主総会の特別決議が必要である。ただし、以下のいずれに
も該当する場合は普通決議で可能である。

1)定時株主総会の決議であること

2)減資を行った後に分配可能額が生じないこと(いわゆる欠損てん補目的であ
るこまた、以下の場合には取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会決議)で可
能である。

1)株式の発行と同時に減資をする場合において、当該発行によって生じる資本
金の額が当該減資の額を下回らない場合

債権者保護手続(会社法第449条)

減資は債権者の利害に重大な影響を及ぼすおそれがあるため、株式会社は、債権
者保護手続を行わなければならない。債権者保護手続は、株主総会特別決議によら
ない減資であっても省略できない

[3]準備金の額の減少(会社法第448条)

準備金(資本準備金または利益準備金)を減少する場合は、減資の場合と異なり株主総会普通決議が原則となる。ただし、株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において当該発行によって生じる準備金の額が当該準備金の額の減少する額を下回らない場合は、取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会決議)で可能である。

準備金の額を減少する場合も原則として債権者保護手続が必要である。ただし、①減少する準備金の額の全部を資本金に組み入れる場合、②定時株主総会の決議によって欠損てん補目的で行う場合には、債権者に不利益は生じないので債権者保護手続は不要となる(会社法第449条1項)。

2 配当

剰余金の配当に関する規定には以下のようなものがある。なお、剰余金とは貸借対照表の資産の額と自己株式の簿価の合計額から負債・資本金。準備金などを減じて得た額をいう(会社法第446条)。

[1]配当手続(会社法第453条)

株式会社は、原則として、株主総会の普通決議により1事業年度中いつでも、何回でも剰余金の配当をすることができる。なお、取締役会設置会社においては取締役会決議によって1事業年度中1回に限
り中間配当(金銭に限る)をすることができる旨を定款に定めることができる(会社法第454条5項)。

[2]現物配当

金銭以外の財産による配当を現物配当という。現物配当は、株主に対して金銭分
配請求権を与える場合は株主総会普通決議で可能であるが、与えない場合は株主総
会特別決議が必要である。なお、株式等(株式、社債および新株予約権のこと)を
配当財産にすることはできない。

[3]配当制限(会社法第458条)

株式会社は、純資産の額が300万円を下回る場合には配当を行うことができない。

[4]分配可能額(会社法第461条)

株式会社は、原則として分配可能額を超えて配当することはできない。なお、分配可能額とは、剰余金の額などから自己株式の帳簿価額など株主への分配に用いられない額を減じて得た額をいう。

3 計算書類等

[1]計算書類等の作成・保存(会社法第435条)

株式会社は、決算にあたり、事業内容と財産を明らかにするため、各事業年度に係る計算書類および事業報告ならびにこれらの附属明細書(=計算書類等)を作成し10年間保存(事業報告を除く)しなければならない。

[2]計算書類等の監査など

計算書類等は、監査役その他の監査機関の監査を受けなければならない(会社法第436条1項他)。監査後の計算書類等は、取締役会設置会社では取締役会の承認を受けなければならない(会社法第436条3項)。また、計算書類は、原則として定時株主総会の承認を受けなければならない(会社法第438条2項)。各事業年度に係る計算書類等は、定時株主総会の日の1週間(取締役会設置会社では2週間)前の日から、本店に5年間、写しを支店に3年間、株主および債権者の閲覧等のために備え置かなければならない(会社法第442条)。

なお、取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集に際して、株主に対して計算書類および事業報告を提供しなければならない(会社法第437条)。

[3]計算書類の公告(決算公告)(会社法第440条)

株式会社は、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表を公告しなければならない。大会社では、貸借対照表および損益計算書を公告しなければならない。ただし、電子公告以外の公告(=官報または時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙による公告)による場合は、全文ではなく要旨の公告で足りる。

なお、金融商品取引法の規定に基づく有価証券報告書の提出会社は、決算公告は不要である。これは、有価証券報告書に記載される事項は計算書類の内容よりも多く、かつ公衆に閲覧されるためである。

[4]臨時計算書類

期中の配当のために、配当の都度、分配可能額を算出する場合、臨時計算書類(「計算書類等」に含まれる)が作成される。基本的には決算期の計算書類(貸借対照表および損益計算書)と同じであり、原則として監査機関の監査や取締役会・株主総会の承認が必要である(会社法第441条)。ただし公告の必要はない。

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