不当利得

不当利得とは、法律11の原因がないのに(正当な理由がないのに)他人の財産または労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(=受益者)に対して、その利得を返選する義務を負わせる制度のことである(民法第703条)。

たとえば、定価1,000円の書籍を購入する際に五千円札で支払い、9,000円のおつりを受け取ったとする。この場合、本来のおつりは4,000円であるから、不当利得に基づいて、買主はもらい過ぎた5,000円を売主に返還する義務を負う。不当利得は、不法行為と同様、人の意思に基づかない法律関係の1つである。

不当利得の成立要件

次の4つの要件をすべて満たしたときに、不当利得が成立する。
1)他人の財産または労務によって利益を受けたこと(受益)
2)そのために他人に損失を与えたこと(損失)
3)「受益」と「損失」との間に因果関係があること
4)法律上の原因がないこと

不当利得の効果

[1]「善意の受益者」の返還義務(民法第703条)

不当利得について善意の受益者は、「その利益の現存する限度(現存利益)」で、利得の返還義務を負う。

「現存利益」とは、取得したすべての利益から、費消(使い果たすこと)、滅失・毀損した部分を差し引いて、現に利益が残存しているものをいう。ただし、金銭を利得した場合に、それで借金を返済したり、利得した金銭を生活費に充てた場合には、それによって自分の財産の減少を免れているので、手元に金銭が現に存在しなくても、なお「現存利益」があるとされる。

[2]「悪意の受益者」の返還義務(民法第704条)

悪意の受益者は、その利益が現存しなくても、利益の全部に利息を付して返還しなければならない。さらに、損失者に損害が生じた場合には、その損害も賠償する義務を負う。

[3]不当利得の補充性

不当利得は、財産的な法律関係が他の手段を使って処理できない場合に最終的な後始末をする、無過失責任の制度である。すなわち、契約責任(債務不履行など)による処理が可能であれば、まずそれが先行する。次に、不法行為など、民法の各条文による処理ができれば、それによる。これらの法的処理ができない場合に、不当利得が適用される。なお、不当利得返還請求権の消滅時効は、債務不履行と同じく、10年である(民法第167条1項)。

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