1 役員等の責任免除
役員等(取締役、会計参与、監査役、執行役または会計監査人)が、その任務を怠って株式会社に損害を与えた場合、その損害を賠償する責任を負う(会社法第423条1項)。この責任の全部(または一部)を免除するためには、総株主の同意が必要である(会社法第424条)。
ただし、当該役員等が職務を行うことについて善意かつ無重過失のときは、株主総会特別決議等によって、賠償責任額から年間報酬などの額に一定の数を乗じた額を差し引いた額を免除(一部免除、全部免除は不可)することができる(会社法第425条1項、309条2項8号)。そして、平成26年6月27日に公布された改正会社では、免除後の最低責任限度額の範囲を図表2-42のように定めている。
2 株主代表訴訟制度(会社法第847条)
株主代表訴訟制度とは、役員等、発起人、設立時取締役・監査役、清算人(以下、「役員等など」とする)が任務を怠って株式会社に損害を与えた場合において株式会社が当該役員等などに対して責任を追及しないときなどに、役員等などに対する損害賠償請求を、株式会社に代わって株主が請求する制度のことである。
手順は、まず株式会社に対して、当該役員等などに対して損害賠償責任を追及する訴えの提起を請求する。請求の日から60日以内に株式会社が訴えを提起しないときは、当該株主は、株式会社のために、損害賠償責任を追及する訴えを提起することができる。
株主代表訴訟を行える株主は、単元未満株主を除く以下の株主である。
1)株式譲渡制限会社:株主(保有期間の制限はない)
2)公開会社:6か月(定款で短縮可能)前から引き続き株式を有する株主
3 多重代表訴訟制度(会社法第847条の3)
平成26年6月27日に公布された改正会社法により、株主代表訴訟制度における当該株式会社の最終完全親会社等(=最上位の親会社という意味)の株主にも、役員等に対する損害賠償責任を追及する訴えの提起を請求することができるようになる(「60日」「6か月」については株主代表訴訟制度と同じ)。
訴えを提起できるのは、最終完全親会社等の株主であって、①当該最終完全親会社等の総株主の議決権の100分の1以上の議決権、または②当該最終完全親会社等の発行済株式の100分の1以上の株式、のいずれかを有する者である(注:「100分の1」という割合は定款で引下げ可)。
ただし、役員等の任務′解怠の事実が生じた日において、最終完全親会社等(およびその完全子会社等)において計上された当該株式会社(役員等の任務解怠があった株式会社のこと)の株式の帳簿価額が、最終完全親会社等の総資産額の5分の1(定款で引下げ可)を超える場合の役員等の責任(=「特定責任」という)が多重代表訴訟の対象となる。
4 役員等の第二者に対する損害賠償責任等(会社法第429・430条)
役員等が、その職務を行うについて悪意または重過失があり、それによって第二者に対して損害を与えたときは、その第二者に対して損害賠償責任を負う。
株式会社の株主は間接有限責任であるため、株式会社が多額の負債を抱えて倒産したとしても、債権者は株主に対して弁済を請求することはできない。しかし、その倒産が取締役の計画倒産や放漫経営による場合でも、債権者が弁済を請求できないのは不合理である。そこで、このような場合(計画倒産=悪意、放漫経営=重過失)に、債権者が当該取締役に対して損害賠償を請求できることを認めるのがこの制度の大きな意義である。
また、役員等が第二者に対して損害賠償責任を負う場合において、他の役員等もその損害賠償責任を負うときは、これらの者は連帯して損害賠償責任を負う。
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