こんにちは。堤 国之助(twitter:kuninosuke1)です。
2020年3月4日、FRBのパウエル議長は記者会見で、「景気への新たなリスクに対してアメリカ経済の強さを維持する」という理由で、緊急利下げを発表しました。今回の異例ずくめだったこの利下げの背後に潜むリスクを、分析していきたいと思います。
異例の緊急利下げ
FRBは新型コロナウイルスによる景気懸念の対策として、0.5%の緊急利下げを実施しました。利下げは一般的な景気対策ですが、今回の利下げは通常と異なる点が二つあります。
一つ目は利下げ率です。通常、利下げは一度に0.25%の幅で実施されます。ところが今回は0.5%と倍の数値でした。二つ目は利下げタイミングです。記者会見前の市場の予想は、3/17~18のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利下げが発表されるものでした。ところが半月も待たずしての利下げ実施となりました。
過去の緊急利下げ
過去、FRBが緊急利下げを実施したことは何度かありました。下記の通り、LTMC(ロングターム・キャピタル・マネジメント)破綻、ITバブル崩壊、米同時テロ、サブプライムローンと、だれもが知っているような景気下落のきっかけとなる出来事です。
今回の新型コロナウイルスによる景気懸念は、ここに並ぶような出来事と同等のリスクとFRBは判断したのでしょうか。その可能性ももちろんあり得ますが、真の狙いは新型コロナウイルス対策ではなく、米ハイ・イールド債市場の安定化ではないかと考えています。
債券市場のバブルとハイ・イールド債
昨年末から、市場関係者の間で債券がバブルになっているという話を度々耳にします。世界各国の金融緩和によって行き先をなくしたお金が、株⇒安定債券⇒ハイ・イールド債券といった順に資金流入しているのです、実際、アメリカ企業の負債は約9兆ドルとなっており、金利が上昇すれば返済できなくなるリスクをはらんでいます。
特に懸念されているのがハイ・イールド債市場です。ハイ・イールド債とは、利回りが高く信用格付が低い債券のことで、ジャンク債などともいわれます。このハイ・イールド債の金利が上昇し、比較基準となる米国債との利回り差が2月28日時点で5.21%と、1週間で1.38%も上昇していました。これは、FRBのパウエル議長が景気後退懸念払拭のために利上げ停止を発表した2019年1月4日以来の高水準でした。このハイ・イールド債の高利回りが続き、企業が債券の返済をできなくなることを恐れ、今回の緊急利下げを発動したのではないかと思われます。
つまり、投資家が本当に注視すべきは新型コロナウイルスの影響だけでなく、債券市場、特にハイ・イールド債市場の状況だと言えるでしょう。債券は一般に安全資産として認知されています。ただし現状を踏まえると、過剰な債券投資はむしろリスクに区分される可能性が高いと思われます。
投資家の姿勢と対応方針
繰り返しになりますが、債券市場は過熱し過ぎといって過言ではないでしょう。読者の中にポートフォリオに占める債券、特にハイ・イールド債の比率が高い方がいれば、これを機にリバランスを考えてもよいかもしれません。
以上、FRB緊急利下げの背後に潜むハイ・イールド債リスクになります。ご愛読いただき、ありがとうございました
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