外貨を持つ重要性 – 長期では円安の可能性を見越して

投資の基礎知識・思考方法

こんにちは。飯田隆太です。(twitter:リュータ)

 

 東洋経済が「ジム・ロジャーズ「円はもう安全資産ではない – 年金を老後の当てにする日本人は甘すぎる」という目一杯煽るタイトルの記事を発表しています。

 

 一般の方からすれば、ピンと来ないかもしれませんが、ジム・ロジャーズ氏は、アメリカ合衆国の投資家で、世界的に有名なクォンタム・ファンドの共同設立者です。また、ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び「世界三大投資家」と称されています。

 

 最近はなぜか、日本の読者向けの記事によく顔を出すようになっており、暴落時にキャッシュ・ポジションを高くする重要性や日本の将来を考えれば若者は脱出すべきといった議論を展開しています。賛否が分かれる主張ではありますが、個人的には一理あると思っております。

 

 今回は「円はもう安全資産ではない」という議論を上記の記事の中では展開しており、氏のことを特に知らない読者からすれば、「知らない白人の爺さんがなにか喚いている」としか映らないかもしれません。しかし、この議論も毎度のことながら、一向に値するものであり、未だに日本円しか持っていない方々は、今から少しづつ外貨で資産を持つことの重要性の理解を高めるとともに、やはり少しづつ外貨に資産を分散していくべきだと思っております。

 

長期的に見れば日本円は円安に向かう

 長期的に見れば、円安・円高は日本国の経済のレベルで決まっていくはずです。現在、日本の実質GDPは日銀の未曾有の量的緩和やゼロ金利政策にもかかわらず、伸び悩んでいます。以下の図で確認してもわかるとおり、かろうじてゼロ以上をキープしているといった状態です。

 

日本の実質GDP成長率の推移 (単位は%。2019以降は予測)

(出所: IMFより、2019年7月23日時点に取得したデータで作成)

 

 為替レートは、各国の経済成長や金利を初めとして相対的な状況で決まりますので、次に先程のグラフを他の國と並べて見てみます。日本は赤線ですが、一目でわかるとおり、先進国の中でも既に最低レベルの成長しかできていません。加えて、日本の特異な状況としては、これから人口の減少や加速する増税などのマイナス要因が目白押しであることから、各所で言われているとおり、経済の成長率と経済規模は低下していくことが予測されます。

 

各国の実質GDP成長率の推移 (単位は%。2019以降は予測)

(出所: IMFより、2019年7月23日時点に取得したデータで作成)

 

日本の人口推移 (2018年以降は予測)

(出所:国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来人口推計」(平成29年)より作成)

 

通貨は日本円に限らず、分散して持っておくべき

 短期的に見れば、いまもそうであるように、米国の利下げや株式市場の大幅な調整ないしは暴落をうけて、一時的な円高になるかもしれません。しかしながら、長期的には既に上述したような構造要因を背景に円安になっていくことが予想されます。

 通貨を分散しておくことで、今後円安になった際に以下のような効果を享受できるようになります。

 

家計における負担の増大への対策

 日本は、輸入で多くの消費を賄っていますから、アベノミクスで多くの消費者が実感したように円安になれば家計における負担は高くなっていきます。もし例えばドルで資産を持っていれば、円安ドル高に向かっていった場合には、ドル建ての資産は増えることになりますから、このようなダメージを相殺ないしは緩和することが可能です。ドルで普段の食事や日用品を買うわけではありませんが、ドル建ての金融資産が実質的に増えることにより、全体的に見て、ダメージを相殺するということです。

 

ゼロ金利下でも外貨建てで金利の恩恵を受ける

 ゼロ金利政策は、景気拡大政策の一環なので、本来はこのように長期化することはあまり予測されませんが、日本の場合は、景気が拡大してこなかったためもうずっと銀行に預金していても何の恩恵も受け取ることができないでいます。

 

 一方で、海外に目を向けると、通常の定期預金や元本割れのリスクをほぼ考えなくてもよいMMFなどでも現時点で~2%の恩恵を受けることができます。また安全性の高いとされる集合債権のETFなどであれば、税引き前ではありますが、2.5%のものもあります。

 

 為替リスクは気になるかもしれませんが、長期で見れば、日本の経済は相対的に衰退し、また円安に進むでしょうから、いまから、外貨建てて資産形成をはじめたほうがよい言うことができます。

 

 日本円は長らく強い通貨であったため、日本人は、わざわざ他の通貨を持つことをしなくても今まで問題はありませんでしたが、今後、長期的に円安の方向に向かうことが予想されるなかでは、ひとりひとりがドルなどの外貨建てで資産形成していくことが当たり前に求められる時代を迎えるのでしょう。

 

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